「往来」空みつえ
いつも何故だか不安になる
私だけ道の真ん中に立ちつくして
道を通る往来を見ている
立ち止まって話する人
こちらに手を振ってくれる人
あいさつだけして去っていく人
二人して手をつないで歩いているのに
進んでいくのは
君一人だけで
私はやっぱり
同じ場所で足踏みして
君は
ちらと笑ったっきり過ぎていき
言えたと思うと
ずっと先の方で手招きして
そうして十年
そうして百年
そうして千年
君の背中は
もう影も消えて
私だけ道の真ん中に立ちつくして
道を通る往来を見ている
また君が笑いそうな気がして
君の背中思い出して
たった一人きりで
往来を見ている
平成13年10月
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この作品は、当時、自分の作ったキャラクターに視点をあてて詩作品を作る試みをしていた時の作品です。自分を主眼に置いた詩作品ではなく、そのキャラクターの心理状況に主眼を置いた詩作品になるので、いつもと作風が違います。このキャラクターが登場する作品は、結局…これだけだったかな?